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「あかちゃんといっしょ」のサイトをご覧の皆さん、きょう、何食べる?

こんにちは。カウンセラーの高橋ライチです。

このコラムは、月1回更新予定です。

私の大好きな漫画「きのう何食べた?」(よしながふみ著 モーニングKC)にちなんで、
食事を担当しているシュフの多くの合言葉「きょう何食べる?」をこの連載のタイトルとしてみました。
今夜のメニュー決めのヒントも盛り込みつつ、
日々の暮らしにまつわるあれこれ、
子どものころのことなど綴ります。
妊婦さんや、赤ちゃん育児真っ最中の皆さんが、ほっと一息つけるような時間になれば幸いです。

さて第4回のテーマは 「クリームシチュー」!



皆さんが子どものころ、好きだったったメニューは何でしたか?
私の母は料理がうまく、私が好きなおかずはたくさんあったのですが、
中でもクリームシチューは大好きトップ3に入るものでした。

4歳上の姉はカレーも好きでしたが、就学前の私は辛いのが苦手だったので断然シチュー派。
母が夕飯の支度にじゃがいもや玉ねぎやニンジンを刻み始めると、
(カレーじゃありませんように。シチューにしてください)
と心の中で神様にお願いしていました。
なんで直接母に言わないかというと、
「カレーが食べられないなんて、子どもだな」
とからかわれ、バカにされるのが嫌だったのです。
幼いなりのプライド、大人になるとついつい忘れて子どもたちをからかったりしてしまうんですけどね。
当時の自分のこと、よく覚えています。

我が家のシチューは、特別なものでなく「シチューミクス」と呼ばれる「素」を使って作る、
ごくふつうのおうちシチュー。
それが私は大好きでした。
あの匂いを嗅ぐと、なんというか安心して、心がふんわりと満たされるのでした。

幼稚園に上がるか上がらないかの年齢で、私は家を飛び出したことがあります。
原因はまったく覚えていないのですが、4歳くらいのその日の私はとても腹を立てていて、
孤独で、やさぐれていました。

「もうこんな家、出てってやる」
「もう私なんか、いなくてもいいんだ」
「もうみんな、大っ嫌い!!」

どれも口からは出せなかった言葉ですが、そう言う代わりに、身体が、家を出たわけです。
私は末っ子次女。何か言いたいことがあっても、理不尽だなと思っても、
うまく説明できたためしがありませんでした。

うまく言えないから、ギャーと叫んだり、地団駄踏んだり、泣いたりする。
すると家の中には私より年上の人間しかいないので、みんなうんざりした顔をして、
「言いたいことがあるならちゃんと説明しなさい」
「うるさい」
「泣いててもわからない」
となってしまうのです。
泣きながら説明しようとしても
「お前の話はわけがわからない」
とても気持ちを汲み取ってはもらえません。

人生初の家出をしたその日も、私は強烈に理不尽さを感じているのに言葉が出ない、
という状況で黙って玄関を出たのです。
冬で、外は雪が積もっていました。
家を出て、最初の曲がり角を曲がり、家から見えないところで立ち止まりました。
私には行くところなどなかったのです。
引っ越し間もなかった当時、そこはまだ一人で歩けるほどには知らない、新しい町でした。

曇天の夕暮れどき。電気がつくかつかないか、雪国の冬の、青白い時間。
私はとっさに、たった今曲がった角を振り返って、
ブロック塀の端からヒョイと顔をのぞかせました。
すると、ちょうどうちの玄関の引き戸がガラリと開いて、顔を出した母と目があったのです。
ご近所の4,5軒先の曲がり角から顔を出している幼い娘。
母は驚いたと思います。
なんでアンタそんなところにいるの?どこにいくつもり?なんて質問もできないくらい驚いて、
事態が呑み込めていなかったのだと思います。
「何やってんの、早く入んなさい」
驚きのあまりむしろ淡々と、ぶっきらぼうな指示がきました。
私も驚いていました。衝動的に家を飛び出して、振り返ってみたらお母さんと目が合うなんて。
驚きのあまり、黙って指示に従いました。(笑)

トコトコ歩いて我が家の玄関に戻ると、開いたドアから、シチューの匂いがしてきました。
青白い冷たい外から、暖色の家の中へ。石油ストーブとコンロの火の灯る狭い部屋。
家に入って、特にそれ以上は理由も気持ちも尋ねられることなく、
お咎めもなく、家族でシチューの夕飯を囲みました。
私自身も、怒り続ける理由がなくなるくらい、
シチューは、あったかくて、おいしくて、居心地をよくする食べものでした。



親からみると、子どものことはなんでもお見通しのような気がするものですが、
あの日の私が、どんなドラマを経験していたか、きっと母にはわからなかったと思います。
それよりも、明日の米を研いでおかなければ。日々を回すことで精いっぱい、現在の私よりもうんと若い母親でした。
私の娘たちも、大人で母親である私がなんでもわかっているという驕りの向こうで、
理不尽な想いを抱えたり、こっそりと冒険をしていたりするのでしょう。
それでも、温かい、安心な気持ちになる食べ物を一緒に食べられているうちは、
すべてを共有できなくてもやっていけるのかもしれません。
そしていずれは、自分自身や家族を温める、そんな食事を作れる大人になっていくのでしょう。
幼い日の食卓は、その土台づくりになっているのかな。

写真は、現在の我が家でもよく作る、「素」で作るクリームシチュー。

最近は、中学生の娘は部活だったり塾だったりで食事時間がずれることも多いのですが、
あっためなおしても美味しいシチューは、よく食卓に上がります。
ごはんにかけたり、パンに合わせたり、茹でたショートパスタにかけたり、グラタンにも進化させて、
鍋いっぱいを3日ぐらいかけていただきます。

クリームシチュー

あと4年もすれば高校を卒業、この子にご飯作る時間もあと少しでしょう。
具が多いとの文句も聞き流しつつ母は少しでも野菜を忍ばせて、鍋いっぱいにシチューを作るのでした。
乳幼児を子育て中のみなさんには、はるか遠い未来の話に聞こえるでしょうか。
どうぞ無理はせず、今日も家族で食卓を囲むことのあたたかさを、味わえますように。

(完。おそまつさまでした^^)


高橋ライチ
コミュニケーション・カウンセラー 
2003年に「こぶたラボ」を立ち上げ、子育て中の母のコミュニティのパイオニアとなる。
平行してカウンセリングで女性が自分らしく生きることをサポート。
講座では「聴く」ことの技術のみならず楽しさと感動を伝えている。
2011年の東日本大震災後、ママの話を無料で聴く「リスニング・ママ プロジェクト」をウェブ上で運営中。
NHK TVや新聞でも紹介され、注目を集めている。
14歳と24歳の姉妹の母。1969 年新潟生まれ。
ブログ:http://ameblo.jp/lychee-tangerine/
リスニング・ママ プロジェクト:http://lis-mom.jimdo.com/